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こうしてA社との契約を破棄して，B社との交渉を始めた。
営業マンは懇切丁寧，いろいろなパターンやプラン，実際の「かつら」や、かつらを装着した写真を見せてくれる。
増毛という方法は気に入ったので、近々、かつら＋増毛の契約をする予定であった。
しかし，ある事件が起きたのだ。
しばらく仕事が忙しく，B社からの電話に出れない時期があった。
当時はまだ携帯電話はあまり一般的でなかったから，家に電話をかけてくるのだが，そのたびに同居している両親が不在だと伝えていた。
そんなことが何日が続いたある日，その営業マンがアポイントも取らずに家にやってきたのである！
もちろん，会社名を言わずに友人を装うわけだが，対応した両親にしてみれば，見たことがない人物が友人と名乗ってやってくれば不審に思ってどこの誰か聞く。
この営業マン、最初は適当にごまかしていたらしいのだが、
追求されると，言い逃れできなくなって正体を明かしやがったのだ。
「実はB社の者です。××さんと、かつらの契約の話がしたくて...」
人の家に勝手にやってきて社名と「かつら」の事を伝えるとは非常識にもほどがある。
帰宅後，話を聞いてぶち切れた。
怒りにまかせて、二度と連絡するな，と電話した。
今思い出しても腹の立つ話である。
こうして、いきなり私の計画はつまずいたのだった。
