その1 はじめに


かつらに関する話は,今から十数年前が開始点だった。

「ずいぶん弱っていますね!」

いつもカットに行っていた理容店のスタッフから、衝撃の言葉が告げられた。
最初は意味が分からなかった。

「え?」
「つむじの周りが少し弱っていますよ」

確かに,20代前半にしては額は広い気がする。
しかし,指摘されるほどハゲが進行しているとは思っていなかった。

その予感はあった。祖父も父もあたまは薄かった。「父親を見れば、10年後のあんたは想像できるな」なんて周辺の人には言われていたくらいだ。
抜け毛の量も、多いのは気になっていた。
しかし,それほど進んでいるとは...正直、ショックだった。
20代のうちから、そんなことを気にする羽目になるとは。

「...」
言葉を返せなかった。

その時は、それで終わったが,何より,人から髪のことを指摘されるのはショックだった。
普通、他人の髪をわざわざ指摘する人なんて滅多にいないだろうから、ちゃんと指摘してくれた床屋はありがたかった。
理屈ではそうわかっていたが、納得はできなかった。 触ってみてちょっと髪が少ないのはわかるが,普段頭頂なんて見る機会がない。
いつの間に...

そう。その日からハゲとの戦いは始まったのだ。
正しくは、無意識のうちに避けていた「ハゲ」と、否応なしに正面から向き合う事になったのだ。 当時、まさか自分が「かつら」を付けることになるとは、想像だにしなかった。 「かつら」なんて、年老いたジジイの着ける、情けないアイテムだと信じていた。
だって、そうだろう。テレビで、お笑いで、かつらがどんな扱いを受けているか。
自分は、そんなシーンを笑いながら、不安の種火を心の中に抱えていたのだ。


かつらを使い始めるまで
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